そこからさらに北西の、アセアン通りを北に渡った界隈には、中国市場(タラート・チン)を手始めに、中華系の店が散在する。タイ文化圏のビエンチャンにはたしてどんな中華店があるのか、そんな興味を覚えながら、よく晴れたある暑い午後に一角を散策した。
静かな脇道を5分ほど歩くとアセアン通りに出る。大通りは交通量が多く気分が少し萎(な)えるが、ところどころに漢字表記が見え、好奇心に引かれて先に進む。
アセアン通り沿いには文具や機械工具の店が多い。地元のドラッグストアのような店もあった。
ラオスに限らず、機械がパッケージ化されていない国では雑多な機械部品を売る店を見かける。一見して用途不明な部品も多く、店員はすべての商品を把握しているのだろうかという素朴な疑問が湧く。
中国市場(タラート・チン)の周りには漢字の店が多い。「中国市場」は中国製品を売る円筒形のランドマーク的建物だが、あまり興味を覚えなかったのでそのまま散策を続ける。
ゲストハウスが建つ四つ辻を左に折れると喧噪が低まり、いきおい土着的な空気が広がる。地元の商店街のなかに中華系の店が点在する。
やや奥まった場所に「China market」と書いた三輪タクシー(トゥクトゥク)が停まっていた。ラオ文字でタラート・チンと書かれている。
道の右奥、方角で言えば前方の北側に屋内市場が見える。タラート・ノンドゥアンだろうか。手元の「Hoboマップ」だと微妙に位置が違うので自信がない。入ってみると、純粋に地元の市場のようで、商品は衣料品と肉・野菜が中心である。
行きに、薪(まき)を積んだ店があって気になっていた。帰りに前を通ると、おばさんがちょうど薪を整理している。旅行者が邪魔をするのも気が引けたが、本で単語を調べたあと「これは売っているの?」と聞いてみる。おばさんは静かに笑ってうなずいた。
何日かぶりの快晴で、ビエンチャンは暑い午後になった。
※本稿のタイトルは植田真梨恵さんの曲から取りました。