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ラオス街エッセイ
1 生鮮市場 
 ビエンチャンに着いた翌日、市内のバスターミナル周辺を散策した。どんより眠ったようなビエンチャンも、タラートサオ・バスターミナルの周辺はさすがに交通量が多く、人通りが絶えない。正門を北側に出ると大通りに沿って商店が連なる。露店が歩道にせり出して、通行を圧迫しているところさえある。
 商店街をそのまま北に進むと、右に伸びる脇道がある。のぞいてみると、奥のほうまで店が続いている。おもしろそうなので入ってみた。
 脇道も活気に包まれていた。まるでその周辺だけがラオスから抜け落ちたように慌ただしく、みなテンポよく歩く。私も流れに促されて奥へと進む。

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商店が並ぶ脇道

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バイクの駐車場

 流れに乗って着いた先に、かまぼこ型の建物がある。市場だ。あとで調べたところ、クアディン市場(タラート・クアディン)というようだ。

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奥まで歩くと市場(左奥)があった

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市場の入口。乗合自動車(右)が客待ちをしている

 かまぼこ型の建物は後回しにし、右手にある、ごちゃごちゃと貧相なテントを張った一角を見に行く。通路の両側に多くの八百屋がひしめく。薄暗い。テント屋根が通路の真上に張り出していて、光が入らないのだ。広い通路に出るとようやく左右のテントが別れ、明かりが入る。今日のような天候では邪魔な感じもするが、雨も日光も強烈なビエンチャンでは、こういう構造が売り子にも野菜にも好都合なのだろう。
 青菜売り場ではおばさんが商品に水を掛けて、みずみずしさを与えていた。

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手前はマンゴスチン

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これはクワイ?

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野菜売り場。屋根代わりにテントを張っている

 かまぼこ型の建物に入ってみる。フロアの半分ほどが肉売り場だ。大きな塊をその場でさばいている店もある。さして珍しい光景ではないが、黄色い裸電球の下に赤い塊がずらりと並ぶ光景はむしろあっけらかんとして、食肉の根源的な姿を無邪気にさらけ出していた。

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肉売り場

 建物の正面には仏壇が設けられている。高さが3メートルほどある立派な造りだ。市場の片隅にはお詣りグッズを売る店もある。市場の雑踏という日常のど真ん中で、ふと自分に返る静かな場所である。

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建物正面に設けられた仏壇

 生鮮市場など、どこも似たり寄ったりだ。それでも脇道の奥でひっそりと営まれる市場には、整備された観光地では感じることのできない生のエネルギーが、平凡な日常のど真ん中を貫いて流れ出ている。

(2013.1.26 記、6.30 書き直し)