コロバラ・ハン(Kolobara Han)というカフェが朝7時から開いている。ネットにそう出ていたので、行ってみることにする。
早めの時間から開いている店がなかなか見つからないのだった。サラエボの旧市街は観光客相手の店で埋め尽くされているのに、朝メシを食わせる店が少ない。常連なのか、地元のオヤジが腰を落ち着けて時間をつぶしている店はあるにはあるが、2、3のぞいてみても温かい食べ物はない。
そんな事情を昨日のうちに学んでいたので、今日は朝メシを出す店が近くにないか、ネットで調べることから始めたのだった。
コロバラ・ハンには宿から10分ちょっとで着いた。7時半をすでに過ぎているのに、入口の木戸はぴたりと閉じている。中の様子が見えないので、準備中なのか、誰もいないのか、あるいはもうつぶれたのか、判断のしようがない。他の候補は場所が少し離れているので、もし開いていなければ朝メシがさらに遠のく。
どうしたものか決めかねながら、戻る方向に歩いていると、ベビーカーを押す家族連れが、パンを食べながら前から歩いてくる。事前に買っておいたものかもしれないが、なぜか今しがた買ったような高揚した空気を感じた。
そのまま数秒行き過ぎてから、手ぶらで宿に帰っても仕方がないことに気づき、踵(きびす)を返して家族に追いつく。不躾(ぶしつけ)かもしれないが、腹を空かした旅行者なので大目に見てもらいたい。
「すみません、どこで買ったのですか」(Izvinite, gde ste kupili ?)
と、片言のセルビア語で聞いた。
Sorry, I don't understand.
返ってきたのはきれいな英語だった。そういえば人が食べ歩く姿をあまり見ないので、何となく違和感を感じていたのだったが、なるほど外国の人なら納得する。
改めて英語で聞き直すと、旦那が後ろを振り返りながら、「そこを左に曲がってすぐ右に曲がります……そして建物の中」と。本人も言葉が途切れがちで、説明が難しそうにしているので、それ以上聞けずにいると、奥さんが「緑の看板があります」と的確な助け船を出す。
誤解を恐れずに書けば、女性は食べ物屋の場所をわりと明確な風景で覚えている。実際に行ってみるとたしかに入口がとてもわかりづらく、「緑の看板」という奥さんの言葉がなければ確実に見過ごしていた。感謝。
朝食用にチョコクロワッサン1つと、昼に列車で食べるためのチーズ入りのパンを買う。合わせて1.80マルク、100円ちょっとであった。
パン屋への入口は緑の看板が目印
チョコクロワッサンと紙袋