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旅雑記
ハンガリー空腹なう
(副題:ハンガリーでハングリー)
2015.6.126.17
 ハンガリー旅の断片を、思い出した順にのんびり連ねていきます。
〈1〉ネープリゲットにて
Népliget
写真
ネープリゲット・長距離バスターミナル
6/14()11時半 ◇ これから日帰りでカロチャ(Kalocsa)に行く。そのためにバスターミナルにやってきた。ネープリゲットのバスターミナルは地下鉄駅と直結しているため、初めてでも迷わずに着くことができる。旅行者フレンドリーなバスターミナルである。
 問題は荷物だった。今夜は宿を変わるので荷物をすべて持って来ていた。ブダペストを代表する長距離バスの発着所なのだから、コインロッカーや荷物預かりくらいはあろうと、まったくの希望的観測で来たのだった。
 その種の設備は目立たない場所にひっそり佇(たたず)んでいるのが普通なので、フロアの奥のほうを探してみるが、それらしい影は見当たらない。フロアをもう1周してみるが、やはりない。フロアの真ん中を陣取っている階段の下に目をやると、清掃具でも入っていそうな小さな部屋がある。開いた扉に、外に向けた貼り紙があり、太いフォントで Nyitva と書かれている。そのすぐ下には時間のような数字もある。Nyitva はオープンの意味である。
 これは、もしかして。
 早合点を戒めながら扉の中をのぞくと、六畳より狭い空間にちょっとした棚がしつらえてあり、多くのかばんが置かれている。
 ——あぁ、あった。
 料金の450フォリントは受け取り時に払うようだった。私はかばんと引き換えに預かり証をもらい、外に出た。
 荷物預かりの向かいがチケット売り場だった。自分の番になり、窓口でカロチャと告げると、おばさんは発券システムのディスプレイをこちらに見せ、料金や発車時刻や乗り場などを丁寧に教えてくれる。
 乗り場に向かう前にサンドイッチとジュースを仕入れる。ただでさえ店が少ないと予想される田舎町だ。日曜日にはすべての店が閉まっていると覚悟しておいたほうがいい。晩メシはブダペストに戻って食べる予定なので、カロチャで飢えることはないはずだが、小腹をすかせながら物欲しげに歩いても楽しくはない。
 発車10分前くらいに乗車が始まる。この1110番のバスはカロチャが終点ではない。乗り過ごすと大変なので、乗り込む前に会話集のフレーズを反復し、着いたら教えてもらうよう運転手に頼む。Meg tudná mondani Kalocsan?
 しかし残念ながら、発音が悪いのか、文が不自然なのか、それとも両方なのか、運転手は困惑した表情を浮かべている。仕方がないので最後の「カローチャン」だけ繰り返す。
 運「カローチャン?」
 私「カローチャン」
 運「OK」
と、何がOKなのかよくわからないが、カロチャで降りることは伝わったようだ。着いたら声を掛けてくれるだろう。

カロチャに行くバス
(ハンガリー語では sz[s] の音を表す)

カロチャまでのバスチケット
参考データ
 ネープリゲット・バスターミナルでの荷物預かり:場所はチケット売り場の前、階段の下。原則無休のようで、夜は21時まで。基本料金は450フォリント(2015年6月現在)
マークハンガリー語にまつわる蛇足
カロチャン:最後に付く「ン」は日本語の「で」に当たり、カロチャで、という意味になる。
(2015.8.11 記)