ネパールにはいま議会がない。制度上はあるにはあるが、政党間の対立でほとんど機能しないまま解散に至った。議会があったところでエネルギー不足は深刻である。まともな水源がないので常に水不足だし、とくに乾期の冬は発電量が減って停電が増える。すなわち計画停電の延長と相成る。
滞在した年末年始は計画停電が毎日12時間だった。
宿や商店は電気がないと商売にならないのでジェネレーター(発電機)を備えている。宿の周辺は旅行者向けの店がずらりと並ぶため、停電の夜でも十分に明るい。
タメルの夜
旅行者が集まるタメル地区には商店・飲食店が多く建ち並び、夜も灯火が絶えない。そうはいっても、照明が灯るのは店の内外だけで、通常のオフィスや閉店後の店はもちろん、上階にも光はなく、光のすぐ隣に闇が迫る。
水事情
ネパールは水事情も悪い。
東南アジアの大都市や中国雲南省の昆明や大理などと違い、近くに大河や湖がない。乾期になれば川の水量も減る。カトマンズの人口は逆に増え続ける。1日の給水時間はせいぜい数時間だと聞く。なので、宿や飲食店だけでなく、裕福な家は屋上や地下に給水・貯水タンクを設けている。
朝、タメル地区を歩いていたら、給水車による給水作業に遭遇した。タンクの残量が減ってくると、こうして水を買うらしい。
市街地を歩いていると、共同の水場をたまに見かける。広場の一角に水道が置かれ、人びとが水を汲んだり洗い物をしたり、子どもたちが遊んでいたりする。大規模なものになると、何メートルか掘り下げて地下水を取っている。中世の建造物だそうで、ヒティと呼ばれる。そこでも多くの市民が水くみや洗濯をしている。効率は悪いが生活の生命線である。
—— 中世のネワール文化が生き残るカトマンズ盆地だが、日々のライフラインはとても心もとない。カースト制度も温存され、人びとの暮らしは見た目ほど文化的ではなさそうだ。