英語なら一応自分の希望を言ってから、たとえば、
But, any color would be fine.(でも、何色でもいいです)
などと言うかもしれない。
他のヨーロッパ語についてもおそらく似たようなものだろうと思うが、浅学ゆえによくわからない。
一方、アジアの言葉には日本語のように「疑問詞+も+肯定形」で表すものがある。「何でもいい」の例をいくつか挙げてみよう。
中国語:什么都可以。
広東語:乜嘢都可以。
タイ語:อะไรก็ได้
下線の色分けは、青が「何」、赤が「も」または「すべて」、そして緑が「可能」「かまわない」に当たる。
ビルマ語(ミャンマー語)の場合は疑問詞の後ろに မဆို を置く。何 ဘာ → 何でも ဘာ မဆို, どこへ ဘယ်ကို → どこへでも ဘယ်ကို မဆို といった具合である。
例文を2つ紹介する。言うまでもなく、これも本からの引用である。
「何でも買える」
ဘာ မဆို ၀ယ် နိုင် ပါတယ်
ဘာ မဆို ၀ယ် နိုင် ပါတယ်
「いつでも来ていい」
ဘယ်အခါ မဆို လာ နိုင် ပါတယ်
ဘယ်အခါ မဆို လာ နိုင် ပါတယ်
上と同様、青線がそれぞれ「何」と「いつ」、赤線が「でも」、そして緑がそれぞれ「買う」と「来る」に対応する。この構文も日本語の発想によく似ている。
似た例がもう少しないか、ほかの言葉でも探してみたが、残念ながらこれ以上は見当たらなかった。この種の表現は目次にも索引にも出てこないし、薄い入門書にはそもそも載っていない。
意味は違うかもしれないが、ロシア語でも疑問詞の後ろに уго́дно (ugódna)という助詞を置けばいいようだ。肯定文の「何でも」は что уго́дно となる。適当な例文がないかネットで検索してみると、おもしろいフレーズがヒットした。
Путин мо́жет что уго́дно …
Путин はロシアのプーチン大統領、может は「できる」。つまり、願望か皮肉かは知らないが、プーチンさんは何でもできる、という意味である。