アルバニア語の動詞の現在変化について概説します。
⚠️アルバニア語の下位区分
アルバニア語には:
✓アルバニア南部で話される①トスク方言(toskë または toskërisht)と、
✓アルバニア北部やコソボなどで話される②ゲグ方言(gegë または gegërishte / -tja)と、
があります。標準アルバニア語は前者がベースとなっており、このページで扱うのも標準アルバニア語です。(標準アルバニア語はコソボでも普通に通じます)
✓アルバニア南部で話される①トスク方言(toskë または toskërisht)と、
✓アルバニア北部やコソボなどで話される②ゲグ方言(gegë または gegërishte / -tja)と、
があります。標準アルバニア語は前者がベースとなっており、このページで扱うのも標準アルバニア語です。(標準アルバニア語はコソボでも普通に通じます)
このページの内容
・be動詞とhave動詞
・能動型動詞の直説法現在形
・非能動型動詞の直説法現在形
・否定と疑問、現在進行形
・be動詞とhave動詞
・能動型動詞の直説法現在形
・非能動型動詞の直説法現在形
・否定と疑問、現在進行形
§1 be動詞とhave動詞
1-1 である jam
英語のbe動詞に当たる動詞です。
〈動詞 jamの現在形〉
単複
1jamjemi
2jejeni
3ështëjanë
1jamjemi
2jejeni
◊ 2人称複数形:ヨーロッパ語の多くの言葉と同様、2人称複数形は敬語に対応します。言い換えると、友だちや子ども以外には相手が1人でも基本的に2人称複数形を使います。2人称単数形は〈ため口〉に当たります。
3ështëjanë
◊メモ
•「私」「あなた」「それ/彼/彼女」の形をハイライト表示しています。
•「私」「あなた」「それ/彼/彼女」の形をハイライト表示しています。
◊2人称複数形
•ヨーロッパ語の多くの言葉と同様、2人称複数形は敬語に対応します。言い換えると、友だちや子ども以外には相手が1人でも基本的に2人称複数形を使います。2人称単数形は〈ため口〉に当たります。
•ヨーロッパ語の多くの言葉と同様、2人称複数形は敬語に対応します。言い換えると、友だちや子ども以外には相手が1人でも基本的に2人称複数形を使います。2人称単数形は〈ため口〉に当たります。
◊発音のヒント j
•アルバニア語の j の文字はドイツ語のようにヤ行の子音を表します。なので、ja はヤ、je はイェになります。
•アルバニア語の j の文字はドイツ語のようにヤ行の子音を表します。なので、ja はヤ、je はイェになります。
例
✓ 私は日本から来ています
Unë jam nga japonia.
Unë jam nga japonia.
• unë:私(主格)
• nga japonia:英 from Japan
• nga japonia:英 from Japan
✓ お忙しいですか(男性に対して)
Jeni i zënë ?
Jeni i zënë ?
✓ お忙しいですか(女性に対して)
Jeni e zënë ?
Jeni e zënë ?
• i zënë (m); e zënë (f):忙しい
✓ これは塩辛い
Kjo është e kripur.
Kjo është e kripur.
• kjo:これ(単数主格)※
• i/e kripur:塩辛い
※ kjo は「これ」の女性形ですが、目の前のモノを指すときによく使われるようです。
• i/e kripur:塩辛い
※ kjo は「これ」の女性形ですが、目の前のモノを指すときによく使われるようです。
1-2 もっている kam
英語のhaveに当たる動詞です。
〈動詞 kamの現在形〉
単複
1kamkemi
2kekeni
3kakanë
1kamkemi
2kekeni
◊ 2人称複数形:ヨーロッパ語の多くの言葉と同様、2人称複数形は敬語に対応します。言い換えると、友だちや子ども以外には相手が1人でも基本的に2人称複数形を使います。2人称単数形は〈ため口〉に当たります。
3kakanë
◊jam(である、英 to be)とkam(もっている、英 to have)の比較
•現在変化は3人称単数形を除いて同じで、-am, -e, -emi, -eni, -anë となります。jamの3人称単数形は不規則で është です。
•現在変化は3人称単数形を除いて同じで、-am, -e, -emi, -eni, -anë となります。jamの3人称単数形は不規則で është です。
例文は省略して次に進みます。
§2 動詞の2系統
アルバニア語の動詞の多くは、
能動型動詞(active)と
非能動型動詞(non-active, medio-passive)と
がペアになっています。
能動型動詞(active)と
非能動型動詞(non-active, medio-passive)と
がペアになっています。
〈ごく一般的な区別〉
能動型動詞:動作の対象がある他動詞
非能動型動詞:受動態や自動詞、あるいは自分自身に作用する再帰動詞
能動型動詞:動作の対象がある他動詞
非能動型動詞:受動態や自動詞、あるいは自分自身に作用する再帰動詞
◊後者のような態を〈中動態〉と呼ぶようです
対応の例
〈能〉〈非能〉
haphap-e-m
開ける 開けられる
la-jla-he-m
洗う 自分の体を洗う
(※詳細は後述します)
haphap-e-m
開ける 開けられる
la-jla-he-m
洗う 自分の体を洗う
(※詳細は後述します)
§3 能動型動詞の直説法現在形
さっそく現在変化を見ていきましょう。
3-1〈能〉動詞の現在語尾 ①
■Ⅰ型変化……語幹が母音で終わる
■Ⅰ型変化……語幹が母音で終わる
単複
1-j-jmë
2-n-ni
3-n-jnë
1-j-jmë
2-n-ni
3-n-jnë
◊メモ
•「私」「あなた」「それ/彼/彼女」の形をハイライト表示しています。
•「私」「あなた」「それ/彼/彼女」の形をハイライト表示しています。
◊動詞の代表形
•仏独露語のような不定詞の形はなく、直説法の1人称単数現在形が動詞の代表形になります。
•仏独露語のような不定詞の形はなく、直説法の1人称単数現在形が動詞の代表形になります。
◊2人称複数形
•ヨーロッパ語の多くの言葉と同様、2人称複数形は敬語に対応します。言い換えると、友だちや子ども以外には相手が1人でも基本的に2人称複数形を使います。2人称単数形は〈ため口〉に当たります。
•ヨーロッパ語の多くの言葉と同様、2人称複数形は敬語に対応します。言い換えると、友だちや子ども以外には相手が1人でも基本的に2人称複数形を使います。2人称単数形は〈ため口〉に当たります。
◊発音のヒント j, ë
•アルバニア語の j の文字はドイツ語のようにヤ行の子音を表します。なので、ja はヤ、je はイェになります。
•ë の文字は曖昧なア [ə] を表します。たとえば、mëは [mə] です。
•アルバニア語の j の文字はドイツ語のようにヤ行の子音を表します。なので、ja はヤ、je はイェになります。
•ë の文字は曖昧なア [ə] を表します。たとえば、mëは [mə] です。
例
lexo-j(読む)
現在語幹の <lexo> に上の語尾が付きます。
現在語幹の <lexo> に上の語尾が付きます。
単数|lexo-j, lexo-n, lexo-n
複数|lexo-jmë, lexo-ni, lexo-jnë
複数|lexo-jmë, lexo-ni, lexo-jnë
3-2〈能〉動詞の現在語尾 ②
■Ⅱ型変化……語幹が子音で終わる
■Ⅱ型変化……語幹が子音で終わる
単複
1--im
2--ni
3--in
1--im
2--ni
3--in
例
hap(開ける)
現在語幹は <hap>。複数形には上の語尾が付きます。
現在語幹は <hap>。複数形には上の語尾が付きます。
単数|hap, hap, hap
複数|hap-im, hap-ni, hap-in
複数|hap-im, hap-ni, hap-in
活用のバリエーション
✐1. -e語幹(語幹末が-e)の動詞の一部:2人称複数形で語幹末 e → i に変わります。
例
fle(眠る)
→ 2人称複数形:fl-i-ni
→ 2人称複数形:fl-i-ni
✐2. -a語幹(語幹末が-a)の動詞の一部:2+3人称単数形で語幹末 a → e に変わります。
例
marr(取る)
→ 2+3人称単数形:m-e-rr
→ 2+3人称単数形:m-e-rr
✐3. -s語幹(語幹末が-s)の動詞の多く:2+3人称単数形で語幹末 s → t に変わります。
例
flas(取る)
→ 2+3人称単数形:fl-e-t
→ 2+3人称単数形:fl-e-t
✐4. 上記の組み合わせ
例1
marr(取る)
子音語幹の変化に上記3番の規則が生じます。
子音語幹の変化に上記3番の規則が生じます。
動詞marrの現在変化
単複
語尾ゼロ
1marrmarr-im
2merrmarr-ni
3merrmarr-im
語尾ゼロ
1marrmarr-im
2merrmarr-ni
3merrmarr-im
例2
flas(話す)
子音語幹の変化に上記3番と4番の規則が生じます。
(※さらに2人称複数形が不規則です)
子音語幹の変化に上記3番と4番の規則が生じます。
(※さらに2人称複数形が不規則です)
動詞flasの現在変化
単複
語尾ゼロ
1flasflas-im
2fl-e-tflis-ni
3fl-e-tflas-im
語尾ゼロ
1flasflas-im
2fl-e-tflis-ni
3fl-e-tflas-im
§4 非能動型動詞の直説法現在形
最後に、非能動型動詞の現在変化を見ます。
上で書いたように、非能動型動詞は、動作の対象がない自動詞、受動態、あるいは自分自身への動作を表す動詞です。
上で書いたように、非能動型動詞は、動作の対象がない自動詞、受動態、あるいは自分自身への動作を表す動詞です。
非能動型の語幹
能動型の語幹 + he
(子音語幹では + e)
(子音語幹では + e)
◊能動型と非能動型の対応例
〈能〉〈非能〉
qu-ajqu-he-m (母音語幹)
呼ぶ → 呼ばれる
haphap-e-m (子音語幹)
開ける → 開けられる
qu-ajqu-he-m (母音語幹)
呼ぶ → 呼ばれる
haphap-e-m (子音語幹)
開ける → 開けられる
◊メモ
•非能動型は he または e までが語幹で、-mは1人称単数形の語尾です。
(アルバニア語では直説法の1人称単数現在形が動詞の代表形になります)
•非能動型は he または e までが語幹で、-mは1人称単数形の語尾です。
(アルバニア語では直説法の1人称単数現在形が動詞の代表形になります)
■非能動型の現在変化
単複
1-m-mi
2-sh-ni
3-t-n
1-m-mi
2-sh-ni
3-t-n
例
fto-he-m(招待される)< fto-j(〔能〕招待する)
現在語幹の <ftohe> に上の語尾が付きます。
現在語幹の <ftohe> に上の語尾が付きます。
単数|ftohe-m, ftohe-sh, ftohe-t
複数|ftohe-mi, ftohe-ni, ftohe-n
複数|ftohe-mi, ftohe-ni, ftohe-n
§5 否定と疑問
5-1 否定文
◊否定文のつくり方
動詞の前にnukを置きます。
動詞の前にnukを置きます。
nuk+動詞句
例
✓Unë nuk flas anglisht.
私は英語を話さない
私は英語を話さない
✓Nuk jam i/e interesuar.
私には興味がない
私には興味がない
• 男性は i interesuar、女性は e interesuar
✓Ju nuk keni një motër.
あたなには妹がいない
あたなには妹がいない
5-2 Yes/No疑問文
◊疑問文のつくり方
1. 主語と動詞を倒置
1. 主語と動詞を倒置
動詞+主語 ……❓
2. 文頭に助辞 a を置く
A + 平叙文 ❓
〈答え〉
✓はい Po.
✓いいえ Jo.
✓はい Po.
✓いいえ Jo.
◊発音のヒント j
•j の文字はヤ行の子音なので jo は〈ヨ〉になります。
•j の文字はヤ行の子音なので jo は〈ヨ〉になります。
例1
✓Ka ardhur autobusi?
バスは着きましたか?
バスは着きましたか?
例2
✓A flisni anglisht?
英語は話しますか?
英語は話しますか?
◊主語が代名詞のときは省略されることが多いので、その場合は「2.」の形になります。なお、会話では平叙文のままイントネーションを変えるだけで疑問文にすることも多そうです。
§6 現在進行形
動詞の前に助辞 po を置きます。
現在進行形
po + 動詞の現在形
◊進行形の否定は nuk po …です。
例
✓Po kërkoj një libër në shqip.
私はアルバニア語で書かれた本を探している
私はアルバニア語で書かれた本を探している
✓… nuk po raportohet.
……は報告されていない
……は報告されていない
初版:2021.6.07
構成の一部変更:6.17
構成の一部変更:6.17