ルーマニア語の文字と音についてまとめます。
ルーマニア語はラテン文字を使います。文字は基本的にイタリア語と同じで、英語ともほとんど同じですが、特徴として符号の付いた母音と子音がそれぞれ3つと2つあります。発音も若干の規則を覚えれば、あとはローマ字読みとほぼ同じです。
ルーマニア語はラテン文字を使います。文字は基本的にイタリア語と同じで、英語ともほとんど同じですが、特徴として符号の付いた母音と子音がそれぞれ3つと2つあります。発音も若干の規則を覚えれば、あとはローマ字読みとほぼ同じです。
1. 母音
1a. 単母音
単母音は7つあります。
単母音
a, ă, e, i, î/â, o, u
a, ă, e, i, î/â, o, u
〈説明〉
a [a]:口を開いた明るいア
ă [ə]:口をあまり開かない曖昧なア
o [o]:唇を丸めてはっきり発音する
u [u]:唇を丸めてはっきり発音する
î [ɨ]:[i] から舌をやや後ろに引いて口を少し丸め、口の中ほどから曖昧に出すイ(ロシア語の <ы> とほぼ同じ)→ 非円唇中舌狭母音(ウィキペディア)
â [ɨ]:上記 î と同じ音。î は語頭と語末に用いられ、â は語中に用いられる
a [a]:口を開いた明るいア
ă [ə]:口をあまり開かない曖昧なア
o [o]:唇を丸めてはっきり発音する
u [u]:唇を丸めてはっきり発音する
î [ɨ]:[i] から舌をやや後ろに引いて口を少し丸め、口の中ほどから曖昧に出すイ(ロシア語の <ы> とほぼ同じ)→ 非円唇中舌狭母音(ウィキペディア)
â [ɨ]:上記 î と同じ音。î は語頭と語末に用いられ、â は語中に用いられる
1b. 二重母音、三重母音
i, u, e, o は他の母音の前で半母音となり、二重母音や三重母音を構成します。
〈例〉
・ia, io, iu, ie → イャ、イョ、イュ、イェ
・ea, eo → エヤ、エヨ
・oa → オワ
・ia, io, iu, ie → イャ、イョ、イュ、イェ
・ea, eo → エヤ、エヨ
・oa → オワ
イェと発音される e
「私」などの人称代名詞と、「〜である」の変化形における語頭の <e> はイェと発音されます。(例)私は eu イェーウ、 彼は〜だ este イェーステ
「私」などの人称代名詞と、「〜である」の変化形における語頭の <e> はイェと発音されます。(例)私は eu イェーウ、 彼は〜だ este イェーステ
語末の -i
語末の子音に変化語尾の i が付くとき、語末の i は軟音符号の働きをします。言い換えると、母音 [i] を発音するのでなく、最後の子音を発音するときに舌を口腔の天井(硬口蓋)に近づけて発音します。たとえば、語末が -pi [pʲ] の場合、ピを発音する口の構えをしてイの母音を発音しません。せいぜい短い曖昧なイが軽く伴う程度です。
語末の子音に変化語尾の i が付くとき、語末の i は軟音符号の働きをします。言い換えると、母音 [i] を発音するのでなく、最後の子音を発音するときに舌を口腔の天井(硬口蓋)に近づけて発音します。たとえば、語末が -pi [pʲ] の場合、ピを発音する口の構えをしてイの母音を発音しません。せいぜい短い曖昧なイが軽く伴う程度です。
この現象を口蓋化または軟音化といい、そのような子音を元の子音に対して軟子音と呼びます。発音記号では上付きの j(ʲ)で表します。☞ 直p.24 §5,やさp.18 2(c)
ただし、「子音+ li, ri」については普通に [i] を発音します。 ☞ Col. p.13 A.2
ただし、「子音+ li, ri」については普通に [i] を発音します。 ☞ Col. p.13 A.2
〈例〉
pomi [pomʲ], vezi [vezʲ]
子音+li, ri > sufli [sufli], litri [litri]
pomi [pomʲ], vezi [vezʲ]
子音+li, ri > sufli [sufli], litri [litri]
2. 子音
ルーマニア語に特徴的な子音について簡単に説明します。
c と g
– i, e 以外の前と語末:[k], [g] → カ行とガ行
– i, e の前:[tʃ], [dʒ] → ci チ ce チェ gi ヂ ge ヂェ
– i, e の前:[tʃ], [dʒ] → ci チ ce チェ gi ヂ ge ヂェ
キ、ケ、ギ、ゲは ch, gh を使って表します。
chi キ che ケ ghi ギ ghe ゲ
* 上の法則はイタリア語と同じようです。
ș [ʃ]:s に下コンマ(コンマビロー)が付いた文字。シャ行の音。
ț [ts]:t に下コンマ(コンマビロー)が付いた文字。ツァ行の音。
j [ʒ]:舌を口腔の天井(口蓋)に付けない、澄んだジャ行の音。
x:仏語系の接頭辞exにおいて——
子音の前では [ks]、母音の前では [gz]。
ț [ts]:t に下コンマ(コンマビロー)が付いた文字。ツァ行の音。
j [ʒ]:舌を口腔の天井(口蓋)に付けない、澄んだジャ行の音。
x:仏語系の接頭辞exにおいて——
子音の前では [ks]、母音の前では [gz]。
その他
定冠詞語尾 -ul の <l> は日常会話では発音されません。
定冠詞語尾 -ul の <l> は日常会話では発音されません。
3. 音の交替
ルーマニア語では、語形変化の際に母音や子音が他の音に変わることがよくあります。主に口調上の理由によると思われるので、慣れればなんとなくわかってくるかもしれません。傾向として次のようなパターンがあるようです。けっこう面倒そうです……。
3a. 後ろの音節に <i>, <uri> が現れる
アクセントのある母音が狭い母音に交替する傾向
a → ă, a/ă/ea → e, î → i, oa → o
〈例〉イタリックはアクセント母音
・țară → țăr-i, mare → măr-i
・băiat → băieț-i, iarbă → ierb-uri
・țară → țăr-i, mare → măr-i
・băiat → băieț-i, iarbă → ierb-uri
3b. 後ろの音節に <e> が現れる
アクセントのある母音が狭い母音に交替する傾向
a/ă/ea → e, î → i, o → oa
〈例〉イタリックはアクセント母音
・fată → fet-e, cuvînt → cuvint-e
・balon → baloan-e
・fată → fet-e, cuvînt → cuvint-e
・balon → baloan-e
3c. 後ろの音節に <a>, <ă> が現れる
アクセントのある母音が二重母音に交替する傾向
e → ea, o → oa
〈例〉イタリックはアクセント母音
・a pleca → pleac-ă
・frumos → frumoasă
・a pleca → pleac-ă
・frumos → frumoasă
3d. 語末の子音の軟音化
上記1.の最後で触れたように、語末の子音に <-i> が付くと子音が軟音化します。イを発音する口の構えで子音のみ発音します。軟音は発音記号では上付きの j(ʲ)で表します。
〈例〉イタリックはアクセント母音
・pește → peșt-i [péʃtʲ]
・morcov → morcov-i [mórkovʲ]
・pește → peșt-i [péʃtʲ]
・morcov → morcov-i [mórkovʲ]
c, g
後ろに <i> や <e> が付くと、発音の規則から軟子音やチェ、ヂェになる。
後ろに <i> や <e> が付くと、発音の規則から軟子音やチェ、ヂェになる。
〈例〉イタリックはアクセント母音
・sac [sak] → sac-i [satʃʲ]
・ac [ak] → ac-e [átʃe]
・fag [fag] → fag-i [fadʒʲ]
・sac [sak] → sac-i [satʃʲ]
・ac [ak] → ac-e [átʃe]
・fag [fag] → fag-i [fadʒʲ]
t, d, s, z
後ろに <i> が付くと次のような音になる。
後ろに <i> が付くと次のような音になる。
-t → -ți
-d → -zi
-s → -și
-z → -ji
-d → -zi
-s → -și
-z → -ji
st, sc, șc, str
後ろに <i> が付くと次のような音になる。
後ろに <i> が付くと次のような音になる。
-st/ sc/ șc → -ști
-str → -ștri
-str → -ștri
4. アクセント
規則性はなく、単語ごとに覚える必要があるようです。アクセントが置かれた母音は強く長めに発音されます。アクセント母音を明示する場合はイタリックを用いて示しています。
〔参考〕
『ルーマニア語の入門』(直野敦、白水社、1977年)
『やさしいルーマニア語の決まり文句』(南雲堂フェニックス、1992年)
(『やさしい〜』には新正書法に対応した新版(2002年)が出ています)
『ルーマニア語の入門』(直野敦、白水社、1977年)
『やさしいルーマニア語の決まり文句』(南雲堂フェニックス、1992年)
(『やさしい〜』には新正書法に対応した新版(2002年)が出ています)
初版:
2013.8.20