マケドニア語の文字と音についてまとめます。
マケドニア語はキリル文字を用います。文字は全部で31個あり、大文字と小文字を区別します。ロシア語のキリル文字とほとんど同じですが、一部、異なる文字があります。
マケドニア語はキリル文字を用います。文字は全部で31個あり、大文字と小文字を区別します。ロシア語のキリル文字とほとんど同じですが、一部、異なる文字があります。
1. 母音文字
母音は以下の5つです。文字はロシア語と同じです。
А а:[a]
Е е:[e]
И и:[i] 母音イです。
О о:[o]
У у:[u] 母音ウです。
母音は以下の5つです。文字はロシア語と同じです。
А а:[a]
Е е:[e]
И и:[i] 母音イです。
О о:[o]
У у:[u] 母音ウです。
2. 子音文字(および半母音)
♦ ロシア語の文字と異なるもの
マケドニア語にはロシア語と異なる文字が7つあります。ロシア文字を知っている人の便宜のために、まずはロシア文字と異なるものを挙げてみます。
— ロシア語の文字と異なるもの —
- キリル英字
- 発音
- Јјj
- 半母音。ロシア語のйに相当
- Љљlj
- [l]の軟音。Lのリャ行の音。露語のльに相当
- Њњnj
- [n]の軟音。ニャ行の音。露語のньに相当
- Ѕѕdz
- [dz](ヅァ行)の音。ц [ts] に対する有声音(濁音)。
[s]ではない。 - Џџdž
- [dʒ](ヂャ行)の音。ч [tʃ] に対する有声音(濁音)。
英語の"j"に近い。ж [ʒ](ジャ行の音)との違いに注意。 - Ќќkj
- キャ行またはチャ行の音。
- Ѓѓgj
- ギャ行またはヂャ行の音。
*軟音:通常の音(硬音)に小さい「ャ」「ィ」「ュ」「ィェ」「ョ」または半母音[j]が加わった音。マケドニア語の軟子音(軟音の子音)は上記 љとњ の2つしかない。
*љ, њ, џ の文字はセルビア語にもあります。
*љ, њ, џ の文字はセルビア語にもあります。
♦ 文字の一覧
一覧表を示してもわかりにくいと思われるので、英語のアルファベットに対応した表を示します。英語にない音は適当な位置に入れています。マケドニア語のアルファベット順ではないのでご注意ください。
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— 子音字のまとめ —
(英語のアルファベット順)
- 英 キリル 音
- 説明
- bБб[b]
- čЧч[ʧ]
- チャ行の音。英語のchに近い。
- dДд[d]
- ギリシャ文字のデルタ(Δ)に対応。
- fФф[f]
- ギリシャ文字のファイ(Φ)に対応。
- gГг[g]
- ギリシャ文字のガンマ(Γ)に対応。
- gjЃѓ[gj]
- ギャ行またはヂャ行の音。
- hХх[h]
- žЖж[ʒ]
- ш [ʃ] に対する有声音。ジャ行の音。仏語のjの音に近い。
- džЏџ[ʤ]
- ч [ʧ] に対する有声音。ヂャ行の音。英語のjの音に近い。
- kКк[k]
- kjЌќ[kj]
- キャ行またはチャ行の音。
- lЛл[l]
- ギリシャ文字のラムダ(Λ)に対応。
- ljЉљ[lj]
- Lのリャ行の音。л [l]に対する軟音。
- mМм[m]
- nНн[n]
- [h] ではなく [n] の音です。
- njЊњ[nj]
- ニャ行の音。[n]の軟音。
- pПп[p]
- ギリシャ文字のパイ(Π)に対応。
- rРр[r]
- [p] ではなく [r] の音。ギリシャ文字のロー(ρ)に対応。
- sСс[s]
- つねに [s] の音です。
- šШш[ʃ]
- シャ行の音。英語のshに近い。
- tТт[t]
- cЦц[ʦ]
- ツァ行の音です。
- dzЅѕ[ʣ]
- ц [ts] に対する有声音。ヅァ行の音。[s]ではありません。
- vВв[v]
- [b] ではなく [v] の音です。
- jЈј[j]
- 半母音。ロシア語のйに相当
- zЗз[z]
(調音位置の順)
- 音 キリル 英字
- 説明
- 唇音
- [p]Ппp
- ギリシャ文字のパイ(Π)に対応。
- [b]Ббb
- [m]Ммm
- [f]Ффf
- ギリシャ文字のファイ(Φ)に対応。
- [v]Ввv
- [b] ではなく [v] の音です。
- 歯茎音
- [t]Ттt
- [d]Ддd
- ギリシャ文字のデルタ(Δ)に対応。
- [n]Ннn
- [h] ではなく [n] の音です。
- [s]Ссs
- つねに [s] の音です。
- [z]Ззz
- [ʦ]Ццc
- ツァ行の音です。
- [ʣ]Ѕѕdz
- ц [ts] に対する有声音。ヅァ行の音。[s]ではありません。
- 後部歯茎音
- [ʃ]Шшš
- シャ行の音。英語のshに近い。
- [ʒ]Жжž
- ш [ʃ] に対する有声音。ジャ行の音。仏語のjの音に近い。
- 硬口蓋音
- [ʧ]Ччč
- チャ行の音。英語のchに近い。
- [ʤ]Џџdž
- ч [ʧ] に対する有声音。ヂャ行の音。英語のjの音に近い。
- [nj]Њњnj
- ニャ行の音。[n]の軟音。
- 軟口蓋音
- [k]Ккk
- [g]Ггg
- ギリシャ文字のガンマ(Γ)に対応。
- [kj]Ќќkj
- キャ行またはチャ行の音。
- [gj]Ѓѓgj
- ギャ行またはヂャ行の音。
- [h]Ххh
- 流音
- [r]Ррr
- [p] ではなく [r] の音。ギリシャ文字のロー(ρ)に対応。
- [l]Ллl
- ギリシャ文字のラムダ(Λ)に対応。
- [lj]Љљlj
- Lのリャ行の音。л [l]に対する軟音。
- 半母音
- [j]Јјj
- 半母音。ロシア語のйに相当
〔補足〕
* 母音扱いのр:р [r] が子音に挟まれて「子音+ р [r]+子音」になるとき、р [r] の前に曖昧な音が入って「アル」や「ウル」のように発音されます(成節化というらしい)。条件によってはアクセントをもつことがあります。例:прст, црква, прв
また、成節化する р [r] が語頭や語幹の頭に現れる場合、前にアポストロフィーが付きます。例:'рж, за'ржи
また、成節化する р [r] が語頭や語幹の頭に現れる場合、前にアポストロフィーが付きます。例:'рж, за'ржи
* 語末の有声子音:語末の有声音の子音は対応する無声音に変わります(無声化します)。
* 逆行同化:連続する子音に有声音と無声音が混在する——たとえば、有声子音+無声子音の——とき、最後の子音の有声・無声に影響されて、連続するすべての子音が有声音または無声音になります。つまり、有声子音+有声子音や、無声子音+無声子音などになります。この現象を逆行同化(regressive assimilation)といいます。
3. アクセント
アクセントは後ろから3番目の音節に置かれます。接尾辞が付く場合もその状態で後ろから3番目の位置になります。外来語には必ずしもこれに従わないものがあります。単音節や2音節の場合、アクセントは語頭に来ます。
例:продавач, продавачи, продавачите
アクセントは後ろから3番目の音節に置かれます。接尾辞が付く場合もその状態で後ろから3番目の位置になります。外来語には必ずしもこれに従わないものがあります。単音節や2音節の場合、アクセントは語頭に来ます。
例:продавач, продавачи, продавачите
〔参考〕
『マケドニア語基礎1500語』中島由美、大学書林、1983年
『Macedonian』(3rd Ed.) Christina E. Kramer et al, 2011
『スラヴ語入門』1.4.2, 1.4.3, 3.3.5 三谷惠子、三省堂、2011年
『Eastern Europe phrasebook』(3rd Ed.) lonely planet, 2001
『マケドニア語基礎1500語』中島由美、大学書林、1983年
『Macedonian』(3rd Ed.) Christina E. Kramer et al, 2011
『スラヴ語入門』1.4.2, 1.4.3, 3.3.5 三谷惠子、三省堂、2011年
『Eastern Europe phrasebook』(3rd Ed.) lonely planet, 2001
軟音について:
軟らかくするということ・改
初版:
2013.7.06
1.1版:7.08
1.1版:7.08